死
国境の長いトンネルを抜けるとそこは天国やった。 「って、なんでやねん!」 俺は、突っ込みを入れると電車を降りた。 ただ、看板にはどっからどう見ても『ようこそ天国へ』と書いてあった。 空も地面も真っ白で、周りの人々は皆、白い薄手のローブのようなものを羽織っていた。 「って、俺も着てるやん!」 いやいや、待て待て。たしか、今日も大学行くために京都から大阪行きの電車に乗ってやな。 そんで、昨日の夜、レポート書いててあんま眠れんくて、電車内で寝てしまったんやったっけ。 まぁ、とりあえず改札を出る。 って、人がいっぱいおるだけで、一面真っ白で何も無いし。線路はどこいったんや。 「いらっしゃいませ〜、こちらへどうぞ〜」 ん、あそこで綺麗な女の人が手招きしている。結構胸でかいやん。ザッツ・エロス。 「あの、ここってどこなんやろ?」 「えっ、天国ですよ。見ればわかるでしょう?」 「わからんから聞いてんねやけど」 「あっ、そういうことですか。あなた自分が死んだことを理解してないんじゃ。たまに居るんですよねぇ、そういう鈍感な人」 あきれたように言われた。ちょいムカ。 「そんなん言われて、信じられるわけあらへんやん」 「信じようが信じまいが事実なんですよ〜」 「はぁ、んー、まぁ、ええわ」 どうせ、生きてたってええことあらへんやろうし。 「では、こちらの列に並んでくださいね〜」 俺は列の最後尾につける。 前を見ると、ずらーっと、人が並んでいた。途中から先が霞んで見えるほどに。 「これってどこに続いてるんやろ?」 「えー、それはですね、魂が溢れてかえっててですね」 「はぁ」 「廃棄処分してるんですよ〜」 「って、なんでじゃあああああああああああ」 俺は絶叫した。 「はい、出ました。天国名物シャウトフル。いまのはなかなか良かったですよ〜。ちなみに、逃げ出そうなんて考えても無駄ですよ〜」 「へ?」 「地獄へ落ちます」 「は?」 「いや、ですから地獄です」 う〜ん、ここは考えどこだ。廃棄処分か地獄か。究極の二択。いや、待て。廃棄処分て、死ぬってことなんか。死んでさらに死ぬってどうなるんや。……笑えん。 「それでは、逃げさせていただきます」 「えっ、ちょっと」 俺はすたこらさっさと、逃げ出した。どこ行きゃいいかわからんけど。 って、走ってたら、落ちた。そりゃもう、人間国宝の落語家も真っ青の落ちっぷり。 かなりのスピードで落ちたと思ったが、衝撃も無く地面に降り立った。 空も地面も真っ黒で、周りの人々は皆、黒い薄手のローブのようなものを羽織っていた。 「って、俺、着替えてるやん!」 ん、あそこで綺麗な女の人が手招きしている。あの人も胸でかいのな。神か閻魔の好みかねぇ。 そういや、真っ黒やのになんで見えるんやろ。まぁ、地獄やしな。適当に自分を納得させる。いまさらそんなん考えてても無駄やし、ってのが正直なところ。 「いらっしゃいませ、地獄へようこそ〜」 「ども〜」 「では、こちらの列に並んでくださいね〜」 俺は列の最後尾につける。 前を見ると、ずらーっと、人が並んでいた。途中から先は霞んで見えるほどに。 「これってどこに続いてるんやろ?」 「えー、それはですね、魂が溢れかえっててですね」 「え」 「廃棄処分してるんですよ〜」 「って、なんでじゃあああああああああああ」 「はい、出ました。地獄名物シャウトフル」 俺の二度目の人生は脆く儚く散っていった。
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